1957年、ジャック・ケルアックが発表した『オン・ザ・ロード』は、戦後アメリカを舞台にした自由と放浪の物語。
主人公サル・パラダイスが仲間たちとともに大陸を横断しながら、「生きるとは何か」を追い求めるこの作品は、ビート・ジェネレーション(1950年代アメリカで既成の価値観に反発し、自由と精神性を追求した文学・思想運動)の象徴として今なお読み継がれています。
この小説に描かれた“道”は、単なる移動手段ではありません。
それは、自己と世界を結びつける時間と空間の象徴。
彼らは走り続けながら、社会の枠をはみ出し、生きることそのものを確かめていたのです。
私たち東九州デイリーフーヅもまた、毎日トラックを走らせています。
定められたルート、温度管理、時間厳守。そこには明確な目的があります。
しかし、その繰り返しの中にも、“道を走る者”としての哲学が宿っていると、私たちは感じています。
道路はつねに変化します。
信号、天候、すれ違う車、揺れる荷台――あらゆる要素が絡み合いながら、運行という名の物語を紡いでいきます。
ケルアックが感じた“世界の震え”を、私たちもまた、車輛の振動とともに感じているのです。
哲学者ハイデガーは、「人間は世界‐内‐存在である」と述べました。
つまり私たちは、世界に投げ込まれ、その中で生きている。
ドライバーという存在は、まさにその思想を体現する職業のひとつかもしれません。
ケルアックの旅には終わりがなく、私たちの仕事にも完成はありません。
明日もまた荷を積み、走り、届ける。
そこには“誰かの暮らしを支える”という静かな意志があります。
それが、私たちにとっての『オン・ザ・ロード』なのです。